テンポラリー

そのときに思いついたことの備忘録。租税について考えることが多い

コロナ医療崩壊は厚労省が医療保険と介護保険を分断しているから

 

この投稿は
・コロナ対応の病床に入院できないコロナ陽性患者は、いきなりホテルか自宅での待機となるようだけど、これはおかしい。
・治療法が確立されてない≒医療モニタリングが必要なのだから、まず医療機関に優先的に入院させるべき。
という考え方に基づいて、日本の今般のコロナ感染症対策と平時の医療制度との不整合を考察したものです。

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医療が必要なのに医療が受けられない、医療崩壊という言葉が深刻さを増してきている。
この要因の一つは、医療保険介護保険との連携ができない分断的な制度を作った厚労省にあるだろう。

多くの人は、介護保険のサービスの一部が医療的なサービスを提供しているという意識はあまりないだろうけど、介護保険には介護老人保健施設老健)や介護医療院といった、医療にも一定対応できる施設がある。これらはもともと医療保険上の療養病床群から出発した施設だったのを、介護保険に移行したもので、その一部には「介護療養型"医療"施設」という名称が使われたこともあった。報酬体系とか人員基準とかかなり変容はしているけれど、全く使えないということはないと思う。

仮にこれらの施設が未だに医療保険上の施設として運用されていたならば、医療必要度の低い患者をこういった施設に送り込んで、病床を最大限に確保できたかもしれない。

しかし、それができないのが介護保険で、まず要介護認定を受けないといけないし、ケアマネさんが介入してケアプラン作らないといけないし、そもそも65歳以下は原則介護保険サービスを利用することができない。介護保険の要介護認定やケアプランやサービス支給限度額といった枠組みは、そもそも出来高制の医療保険給付を制限するために導入された医療費抑制のための制度なので、そりゃ使いにくい。
このために、医療機関のコロナ以外の一般疾病の入院患者の受け入れ先が他の「医療機関」しかない。転院先が見つからない。だからすぐにいっぱいになって崩壊する。

厚生労働省内の組織としても、医療保険は保険局、介護保険老健局という風に、完全に管轄が分断している。
思うに、新型インフルエンザ特措法か感染症法には、この医療保険介護保険の垣根を越えられる制度措置が必要だったのではなかろうか。

【制度措置の例】

①まず、検査陽性患者が入院できるよう、一般疾病の患者のうち医療必要度の比較的低い患者(主に療養病床入院患者)を介護保険のために作られた施設に移す。介護系施設に入所するときには、要介護認定やケアプランや年齢制限などを無視するために医療保険を適用する。

②ここから先は介護保険とケアマネの腕の見せ所で、老健施設・医療院入所者を特別養護老人ホームショートステイ施設に移動させる。(医療必要度は比較的高いので、ここで特養の配置医師の他にも、訪問診療料や訪問リハの算定上限回数を緩和するなどして、各専門診療科の開業医・セラピスト等が関与できるようにする。)

③次に、従来の特養入所者・ショートステイ利用者をホテルに滞在させる。ホテル滞在者への対応については、医療現場を離れている休眠看護師に復帰を要請する。(看護師資格を持ちながら看護師として働いていない人は実は多い。それは病棟勤務が大変だったり、一口に看護と言っても診療科によって求められるスキルがかなり違うので、意外と潰しが利かないなどの事情がある。しかし、ホテルに滞在してもらう人は医療必要度の低い高齢者なので、医療第一線に復帰を求められるよりマシではないかと思う。)

医療保険医療機関の外側には、これまで見たとおり一定の医療に対応できる施設も人材も揃っている。
それから医療保険の中にも、休止状態になってる地域の有床診療所のベッドというのもあって、建て替えたりしていなければ、人材を確保して利用したりすることもできるだろう。有床診療所のベッドは、患者側の重症度などの要件があまりないので、どんな患者でも受けいれられるすごく便利な医療施設だ。
無症状から一気に死亡する危険のある新感染症への対策としてこれらの資源を使えていないというのが非常にもったいない。フルパワーを発揮できていないなという印象がある。

医療・介護の現場にいるわけではないので、それぞれがどのように大変なのか実際のところは知らないけれど、もうちょっとやりようはあったんじゃないかと思う。

 

 

このような措置は、実際には難しいだろう。老健入所者を特養に押し込むのは、至難の業だ。
ただでさえ特養は入所希望者が殺到しているからだ。まぁ、現入所者だけでなく、入所待ち中の人もまとめてホテルに押し込むということも、できなくもないかもしれない。それはケアラーをどれだけ確保できるかによるだろう。

実現可能性はともかくとして、「もともとは医療の一部であった介護施設が使えない」という点に一つの問題があるように感じたのでまとめてみた。