テンポラリー

そのときに思いついたことの備忘録。租税について考えることが多い

こども保険は違憲ではないか

■こども保険は違憲ではないか
http://yomiuri.co.jp/politics/20170516-OYT1T50059.html

 

医療保険や年金、失業保険はなりたくてなったわけではない、人であれば誰にでも起こりうる不利益状態に対して給付するから保険が成り立ちうるが、こども保険は(1)子どもをもうけたが、(2)育児にかかる費用の捻出が出来ないという状態に対して給付するということになる。しかし(1)を満たすことが不可能な人(生来的に生殖能力に関する疾患を有する人など)は未来永劫受給権が発生することがないわけで、受給するチャンスがない彼らから保険料を一方的に徴収するのであれば、それは保険の大前提を欠くものといわなければならない。

制度設計如何にもよるが、この問題を解決するために彼らを保険から除外するとすれば、国民側では男性ならパイプカット、女性なら卵巣摘出によって制度を脱退し、保険料徴収を回避することが可能となる。しかし、これを認めると財政施策が国民の生殖能力の放棄を推奨することとなり、ひいては人類種の保存阻害を来すという点で国家にあるまじき愚行である[* 下記参照]。

または受給要件(2)に関連して、給付を受けることを目的とした偽装養子縁組が発生することも考えられる(例:受給に所得制限を設ければ、高所得世帯の子を低所得世帯に養子に出して保険を受給し、山分けするなど)。この点については一般会計歳出事業で行われたとしても同種の問題が生じうる。

結局は、こういったモラルハザードを生み出さないよう、国民全体の賃金水準を底上げする政策が財政効率の観点からして選択されるべきであるし、公保険制度論にはなじまない子ども保険は任意加入に留めるとするか、自然人だけでなく法人にも負担を求め得る一般会計租税を財源とした一般歳出事業として行われなければならないのは明白である。

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[*]生殖能力を有する権利は当人の幸福追求のあり方を豊かにするものであり、これを保険料徴収回避の目的で積極的に放棄する自由を憲法は認めておらず、誰からも奪われてはいけない。故に国家が国民に権利放棄させる又は放棄を想起させるような施策は、それを行わなければ他の人権を保護することが出来ない、他に手段がないなどの必要最小限度であることを検証することすら要しない。
この重大性に鑑みれば、こども保険の「有子世帯の負担の軽減」という本来目的が合憲であるとしても、保険という方法には違憲性が認められ到底容認できないと言いうる。なお制度の概要が判明を待って再度検証が必要。