テンポラリー

そのときに思いついたことの備忘録。租税について考えることが多い

マネタリーベースと雇用者報酬の推移を比較してみる

普通、賃金が上がった下がったは名目賃金、インフレ率変動を加味するなら実質賃金で見ればOKなのだけど、アベノミクスの「異次元の緩和」という特殊な状況下であるので、マネタリーベースと比較してみた。
(ここでは国民経済計算の雇用者報酬を利用した。)


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2013年から2016年にかけて、マネタリーベースは150兆円→380兆円(2.5倍)に膨らんだのに対して、雇用者報酬は254.8兆円→269.9兆円(1.05倍)しか伸びていない。むしろ1円の価値は低くなっている。

日本銀行券発行高(千円札とか一万円札ね)は順当な伸び率だけど、マーケット中の日本国債を日銀が買ってお金を流しているので日銀当座預金アベノミクスで異常に膨らんでいる。金融機関は投資資金がだぶついているということだろうか。日経平均株価が新年早々高値で推移したということがニュースになっていたと思うけど、このマネタリーベースの膨らみ方だとまだ上昇する可能性はある。今からでも博打をかけずコツコツやれば十分利益は出ると思われる。

一方、賃金についてはグラフの通り悲しい状況だし、だぶついた日銀当座預金が投資で市場に流れればその増悪の程度は加速する。なので、いまは「すこしお菓子が高い、暮らし向きがよくない」程度かもしれないけど、潜在的にもっとひどいことになる余地がある。
だからといって株式利益に大きく依存することもリスクがある。投資した事業に対して需要がなければ利益は生まれないわけだけど、国内全体の需要はどう頑張ってもインフレ率の範囲(せいぜい日銀が目標にしている2%増)くらいにしかならない。実際、実質GDPはおろか名目GDPでも1年で一気に2倍になるなんてことはないし、賃金の伸びがその程度なんだから、一般人目線に立てばマネタリーベースの勢いで消費を増やそうとは思わない。投資事業の利益率は市場が期待している程には伸びない可能性がある。
この需要と供給のギャップを補正する意向が出てきた時(例えば首相か財務大臣が「そろそろ異次元緩和の出口が見えてきた」といった発言する)、投資は冷え込むだろう。その後どうなるかはわからない。