テンポラリー

そのときに思いついたことの備忘録。租税について考えることが多い

アスペルガーの「絶対に謝らない」その思考について

■覚書(2)──アスペルガーの思考方法について

定型発達者は自己の行為が相手にどのような効果をもたらすかを推定するとき、客観的に判断される行為と相手に与える効果が結合していると考えることができる。
これは主観と客観を分離して考えることができるからだ。他人Aから他人Bに対してなされる行為とその効果を関連付け、なおかつそれを自己の行為の客観面に当てはめて、その効果を推定することができる。(行為―効果結合)

これに対して、アスペルガー者は主観と客観が未分離のまま事実認識をする。彼らは自己の行為が相手に与える効果を自分の感情に基づいて計算する。(意思―効果結合)

アスペルガー者の「意思―効果結合」に由来する問題行為は下記2つに大別できる。
①対対象者行為
②非対対象者行為

■①対対象者行為について
好きな相手に社会常識的に合致した優しい方法でアプローチできる人もいれば、それ自体支離滅裂な人もいる。前者は軽度のアスペルガー、後者は重度のアスペルガーといえる。
重度の例で、毎晩深夜3時ごろに眠っているところをライトをつけて音楽を大音量で流し、被り物をかぶって踊るという人間がこの世に存在するらしく、しかも本人はそれを相手のことを好きだからやっており、相手も楽しんでくれると考えているようだ。
無論、される側の人間にとっては単なる安眠妨害でしかないので大変不愉快なわけだが、それで怒ったとしても、アスペルガー者はなぜ怒られるのか全く理解できないので基本的に謝らない。
軽度の例では、関係性に比して異常に優しすぎる場合があり、とても魅力的にみえるが、下記の非対対象者行為では問題を抱えているので注意しなければならない。

■②非対対象者行為について
必ずしも対象者のためにするわけではない行為については、自分の内心として対象者を損ねる感情が一切ないので、対象者が傷つくのはおかしいと考える。これは軽度重度問わず、アスペルガー者のほぼ全員が持っている考え方で、 これに周囲の人は悩まされる。

例えば僕が作った料理に相手が「おいしくない」と言ったって、それは料理という「僕以外のモノ」に対して言っただけで、「僕」を傷つける気持ちはない。むしろ作ったこと自体には感謝してたりする。だからそれで「僕」が傷つくのはおかしいと考える。

しかし僕からすれば、その料理は相手を想って作ったものであり、いわば僕の分身なわけで、それをけなされればもちろん傷つく。
料理のような物質的なモノだけでなく、作文、モノの考え方などの表現に対しても「対象者以外のモノ」と「対象者」とに区別して評価を下すことがある。

人間関係においても、非対対象者行為は問題となりうる。
重度の場合、対象者のことはもちろん好きだが、対象者以外に好きな人(要は浮気相手)を作ることがある。
浮気相手と付き合ったとしても、対象者のことも当然愛しているから全く別であり、浮気相手という「対象者以外のモノ」と親しくしたとしても、「対象者」を傷つける意図が本人にない以上、それで対象者がショックを受けるのはおかしいと考える。
本人の主観としては「別モノ」で、主観と客観が分離していない特性から、「別モノ」であることは客観化され、「そんなかんたんなこと、対象者もわかるだろう」などと考え、まったく悪びれることがないし、悪いと思わないから浮気を繰り返す。


一般人からすればこんな考え方は本当に信じられないし、その行為は単純に不愉快だし許されないことだ。
しかし、これを厳しく責任追及すると、(自分が悪いということがわからない)アスペルガー者は理不尽な攻撃と受けとめ、自分こそが被害者だと主張する。
責任追及してる側が「むしろほんとに自分のほうが間違っているのでは?」と自信がなくなり、最終的に人格や尊厳そのものを損ね、精神異常を来す。
どんなに酷い異常が出たとしても、アスペルガー者にとっては「自分と関係なく相手の考え方がおかしい」ので、他人行儀な態度に終止する。

彼らにこちらの気持ちをわかってもらおうと思っても、彼らは主観客観が分離していない以上、相手の立場に断って物事を考えることができないのでその努力は徒労に終わる。

この話の通じなさにいよいよアスペルガーを告知しても、アスペルガー者は自分はそれに該当しないとして、その可能性を認めない。
これも、アスペルガー者としては自分なりに客観視したところ、自分にはおかしなところがない(主観が混じっているから当たり前)から、「相手の気持ちがよくわからない、言葉の裏が読めないといってもそれは相手の思考能力や言語表現能力に問題があるからわからないのであって自分がおかしいからではない」と考える。
アスペルガー者にアスペルガーであることを気づいてもらうことは最も困難といえる。