テンポラリー

そのときに思いついたことの備忘録。租税について考えることが多い

佐川氏立件見送り

https://mainichi.jp/articles/20180413/k00/00m/040/151000c
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書が改ざんされた問題で、大阪地検特捜部は、前国税庁長官佐川宣寿氏(60)ら同省職員らの立件を見送る方針を固めた模様だ。捜査関係者が明らかにした。決裁文書から売却の経緯などが削除されたが、文書の趣旨は変わっておらず、特捜部は、告発状が出されている虚偽公文書作成などの容疑で刑事責任を問うことは困難との見方を強めている。今後、佐川氏から事情を聴いたうえで、上級庁と最終協議する。
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このニュースは国民誰もが「なんとなくそんな気がしていたが、いざ現実に立件が見送られるとなると信じられない」という気持ちだろう。というか自分自身がそういう気持ちでいる。
ただ、その信じられないというのには理由がある。
公文書偽造なのか、虚偽公文書等作成・行使罪なのかはともかく、公文書の偽造の罪の保護法益は「公文書に対する信用」なわけで、「特定の行政行為を適切におこなうこと」や「名義人や文書の提出を受けた者の個人的利益」ではない。
つまり、「日本の文書が、国民から、外国から、信じられなくなること」が起きないようにすることが大事で「全体として内容が変わってないから行政決定に影響を与えなかった」といういいわけは通用しない。
なので、虚偽公文書作成は、作成した時点で犯罪が成立し(挙動犯という類型)、その後どのように利用されたかということは考えなくてよいはず。


また、5ちゃんねるで↓のような規範を立てて大阪地検の対応を批判している人がいたので、興味深く、とりあげておく


この判断はおかしいと考える。
決裁文書という文書の性質上、決裁文書の記載内容の全ては当該決裁における判断基礎になるため、どの記載内容が当該決裁に影響したのか否か、すなわち改ざん内容が当該文書の本質的内容に該当するか否かを事後的に判断することは不可能だと解される。
逆に言えば、本件で削除された記載内容が当初から存在していないとしても、同一の決裁が行われたと言えるだけの特段の事情がなければ、それを事後的に断定することは不可能といえる。
そうすると、いったん真正に成立した決裁文書からある内容だけを削除した決裁文書を作成されまたは変造された場合には、内容虚偽の決裁文書が新たに作出されたものと解するのが相当である。
そして、このような決裁文書改ざんについての最高裁判例が存在しない以上、現段階で直ちに立件を見合わせる特段の事情は存在しないものと言わざるを得ない。

また、本件については決裁文書の決裁可否に直接影響を与えかねない事情についての記載内容が削除されており、この点からみても現段階での立件を見合わせる事情ありとは言いがたい。
むしろその判断を求めるための司法判断が必要な案件といえる。いずれにしても、本件の立件が見送られれば、検察審査会への審査請求は不可避だろう。