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憲法30条解説(樋口陽一)

租税
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納税の義務
第三〇条国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

本条は、議会に提出された政府の原案になかったものを、衆議院における審議で加えられたものである。本条を新たに挿入した理由について、衆議院委員会における芦田均委員長は、「此の条項は改正案の他の条項と対照して既に明白なことであるから、之を明記する必要はないとの論もありましたけれども、本委員会は、斯かる規定が国の基本的法制として最小限度に必要なりと認めまして、新たに挿入した次第であります」(清水・審議録②721-2頁)と説明している。
納税の義務は、1789年のフランス人権宣言13条で、「武力を維持し、行政の経費にあてるために、共同の租税は不可欠である。それはすべての市民の間で、その能力に応じて平等に配分されなけれぽならない」と規定されているように、平等かつ公正な課税の原則と結びついてできたものである。また、納税の義務は、歴史的に租税法律主義の原則の成立と楯の半面をなしている(註解・五七六頁)。
一 納税義務の意味
(イ)本条は、国民の納税義務の宣言としての意味をもっているが、国民の納税義務は、国家を構成する国民の当然の義務であるから、憲法の明文規定によってはじめて生ずるものではない(東京高判昭28・1・26判タ28号61頁参照)。

樋口陽一「注釈 日本国憲法 上巻」より)
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さて、国家を構成するというだけで、納税というものは当然の義務であるということはどの程度自明なのか。僕はこのことがいま大変疑わしい。国家権力は乱用されぬよう分権する(三権分立)ということが前提となっている近代国家で、国民の義務として設定し、国家の側でいう徴税権というのは、制度としてどのように制限されているのか。このことを明確に解説したテキストにいまだ出くわしたことがない。